キーノート

10:45-11:45

水辺の事故ゼロをめざして
~東京オリンピック・パラリンピックの事例から見たアクアティックイベントの安全管理に関する課題と今後~

風間隆宏

公益財団法人日本ライフセービング協会常務理事

講演要旨:公益財団法人日本ライフセービング協会(以下JLA)は、1970年代から水辺の事故ゼロをめざして、主に教育・救命・スポーツ・環境・福祉分野で活動を行っている。1991年に組織が統一され、2021年の今年30周年を迎える。

JLAは、海水浴場やプールでの監視救助活動の他、トライアスロンやオープンウォータースイムなどアクアティックイベントの監視救助活動も長らく全国各地で行ってきた。2017年には、その知見を纏めたオープンウォータースイミング水上安全ガイドラインを発行した。その経験を活かし、東京オリンピック・パラリンピック(以下東京2020)では、海の森水上競技場(ボート・カヌー)とお台場海浜公園(トライアスロン、マラソンスイミング)において、水辺の安全管理業務協力を行う。東京2020に参加するJLAメンバーは、全てJLA認定ライフセーバーであり、その基本資格の一つであるベーシック・サーフライフセーバーは、ILS(国際ライフセービング連盟)のLifesaverに準拠している国際資格である。また東京2020では、レスキューボード、レスキューチューブなどの基本救助器材の他に、RWC(レスキュー・ウォーター・クラフト)やIRB(インフレータブル・レスキュー・ボード)の動力船の活用も行う。JLAでは、それらの操作方法等を学ぶ資格講習会も提供している。

アクアティックイベントの安全管理業務は、その競技特性や会場の状況、大会規模や選手レベル、さらにその日の気象海象によって安全管理体制の構築方法は大きく異なる。まずは事故の未然防止のための監視業務が基本となるが、重大事故が発生した場合、水中でのピックアップから陸上への搬送。さらに陸上医療スタッフとの連携などが必要となる。これら一連の流れを参加ライフセーバー全てが理解しておく必要がある。

本講演では、JLAの教育資格体系や各種講習会の内容、講習会中のヒヤリハット事例等の紹介、アクアティックイベントの監視救助活動に関する現場目線の注意事項、さらに筆者が経験した東京2020における、主に海の森水上競技場での活動内容や課題について紹介する。なお東京2020に関しては、その活動内容によって、講演内容に変更がある場合がある事をご承知おき頂きたい。本講演が、水辺に関わらず様々なイベントの安全管理に携わる方々の今後の活動の一助になれば幸いである。

講演者プロフィール:公益財団法人日本ライフセービング協会(JLA) 常務理事アカデミー本部長。デンマーク水理環境研究所(DHI)マネージャー。東海大学大学院海洋学研究科卒業。1994年に藤沢市片瀬西浜海水浴場でパトロール活動を開始。現在ボランティアベースで指導員養成含む全国各地のJLA主催ライフセービングに関する講習会等を統括している。東京オリンピック・パラリンピックでは、海の森水上競技場(ボート・カヌー)においてWater Safety Coordinatorを務める。JLAライフセービングアワード受賞(2012年)。

共著:ウォータ―セーフティー教本(大修館書店)、編集協力:サーフライフセービング教本(大修館書店)、編集:オープンウォータースイミング水上安全ガイドライン(日本ライフセービング協会)